こんにちは。たんす@tansu_toです。
米国の政府閉鎖が話題です。
政府閉鎖を簡単に説明すると『議会で予算が認可されなかったので政府機関の運営が出来ないよ』という機能不全状態ですね。
公的機関は運営出来なくなり、経済指標の発表が遅れ、株式の新規公開が出来なくなるなど影響は多岐に渡ります。
一国の機能が動かなくなるなんて、日本だとちょっと考えられない事態ですね。
それも世界一の大国であるアメリカ。
株式市場への影響、VIX・米国VIの影響が気になります…
そこで今回は政府閉鎖によるVIXや米国VIへの影響について簡単にまとめました。
この記事を読むことで次の3つが分かります。
・株価暴落、VIX暴騰につながる可能性について
・政府閉鎖時に注視するべきこと
政府閉鎖による米国市場へ影響をしっかりと理解して、株価急落・VIXの急騰に備えましょう。
政府閉鎖は株価急落、VIX急騰の可能性は低いものの、伏兵になる可能性あり
まず政府閉鎖は米国経済に致命的な影響を及ぼしません。
なので株価の暴落、VIXの暴騰をおこす可能性は低いといえます。
しかし米国債が絡むと株価急落、VIX急騰の伏兵となる可能性があります。
それでは一つづつ説明していきます。
政府閉鎖は米国経済に致命的な影響を及ぼさない
以下3つの面から政府閉鎖の影響を説明します。
- 投資家心理
- 米国経済への影響
- 政治家のインセンティブ
投資家心理が冷え込まない
投資家は先行きが見えないこと、つまり不確実性を嫌います。
では市場の不確実性が高くなるとどうなるかというと、投資家はリスク回避のために市場から資金を引き上げようとします。
この投資家が資金を市場から引き上げる状態を『投資家心理が冷えこんだ』というんですね。
では政府閉鎖は先行きが見えない、市場の不確実性が高まるのかというと…全然そんなことないわけです。
市場の不確実性が高まらないので投資家心理が冷えることもなく、市場から資金が引き上げられることもないというわけです。
ではどうして不確実性が大して高くないのかというと『政府閉鎖の終わりについて見通しがついているから』ということに尽きます。
というのも米国では政府閉鎖は何度も発生しているんですね。
なので投資家は過去の政府閉鎖を参考に見通しを付けることができるというわけです。
ちなみに過去の政府閉鎖はこんな感じです。
年月 | 政権 | 期間 |
---|---|---|
1981年月日不明 | ジミー・カーター政権 | 1日間 |
1984年月日不明 | ロナルド・レーガン政権 | 不明 |
1990年月日不明 | ジョージ・ブッシュ政権(父) | 不明 |
1995年月日不明 | ビル・クリントン政権 | 21日間 |
2013年10月 1~17日 | オバマ政権 | 16日間 |
2018年 1月20~22日 | トランプ政権 | 3日間 |
2018年12月~翌年1月25日 | トランプ政権 | 35日間 |
そして上記の表を注目していただきたいのは期間です。
割と短いですよね。
過去の政府閉鎖では2018年を除くと1ヶ月にも満たない短期間で解除しています。
もしも政府閉鎖状態が数ヶ月もの長い間続くということであれば、先行きの見えないリスクから投資家は資金を引き上げたかもしれません。
しかし1ヶ月程度の比較的短期間で解除されてきている過去の事例を踏まえると長期化することはなさそうですよね。
すると投資家は政府閉鎖が長期化するリスクを小さく捉えて資金を市場に残すというわけです。
以上から政府閉鎖によって投資家心理を冷やすことはないといえるでしょう。
米国経済への影響
政府閉鎖による経済の損失はどれほどになるのでしょうか。
一国の機能が停止となるのですから、その影響範囲はとても広いのは明白です。
ちなみに政府機関が運営できない事による影響にはこんなものがあるようです。
- 美術館など施設が閉鎖され観光業へのマイナス
- 職員の無期自宅待機により給与が生じないなど所得が減少
- 経済指標の発表の遅れなどによる投資・企業運営の経営にマイナス
いろんな所に影響が出ていますね。
影響を受けていないところを探すほうが難しそうです。
ではこれらの影響による損失額を見てみましょう。
過去の政府閉鎖は以下のような経済的損失が出たようです。
- 1995年の21日間で『約4億ドル』
- 2013年の16日間で『約240億ドル』
また2018年末から35日間続いた政府閉鎖の損失は30億ドルと推定されています。
なお閉鎖期間と損失額が比例していないのは当時の物価や閉鎖された政府機関による差のようです。
ちなみに上記の損失額を大きいと思いますか?
実はそんなに大きくないんですよね。
というのも米国の経済規模と比較すると大した損失金額ではないことが理由です。
米国の経済規模、つまりGDPと比較して見てみましょう。
約19兆5000億ドル
桁違いとは正にこのこと。
対して2018年末からの政府閉鎖による推定損失額は…30億ドル。
パーセンテージでいえば約0.015%のマイナスでしかありません。
この程度のマイナスなら株価に与える影響も大したことないわけですね。
政治家のインセンティブ
これはそもそも論ですが、市場経済に致命的な影響を出すようなことを議会が行う理由がありません。
仮に致命的な影響を出してしまえば政党・政治家としても大きな悪影響を被りますからね。
そんなデメリットを被るくらいなら殆どの政治家は政府閉鎖を選択するはずがないというわけです。
というわけで政府閉鎖は株価やVIXに大きな変動を与えることは基本的にありません。
しかし1つだけ懸念事項があります。
それは政府閉鎖が債務上限問題と絡んでくる場合です。
こうなると株価暴落、VIX暴騰の布石となる可能性がでてきます。
米国債格下げは金融市場の混乱と市場から資金引上げを発生させる
ここまで説明した通り、政府閉鎖単体では株価暴落を引き起こすほどの力はありません。
しかし政府閉鎖の理由に債務上限問題が絡んでくると注意が必要です。
というのも政府閉鎖が暴落への伏兵となる可能性が出てくるんですね。
事実、直接的原因ではないものの債務上限問題による政府閉鎖危機を理由の一つとした暴落が発生しています。
それは2011年8月に起きた米国債ショックです。
米国債ショックの概要と原因
米国債ショックとは2011年8月に起きた米国債格下げを発端とする株価の暴落のことです。
米国債ショックによりダウ平均株価は米国債格下げ後10%(約1,146ドル)低下し米国市場に大きな影響を与えました。
この米国債ショックの原因と言われているのが米国債の格下げです。
格付け会社S&Pが米国債の格付けを最高評価のAAAからAA+に格下げしたことが市場の動揺を誘い、株価の暴落が発生しました。
そして、格付け会社S&Pが米国債を格下げした理由に、政府閉鎖が関わってくるというわけです。
米国債格付けと政府閉鎖の関係
格付け会社S&P社によると、債務上限引き上げ法案に関する議会の対立が長引いたこと、つまり政府閉鎖の危機が生じたことを理由の一つとして挙げています。
この格付が妥当だったかどうかは分かりませんが、一つだけ確かなことがあります。
それは債務上限引上げ問題に関する政府閉鎖・政府閉鎖危機は、米国債ショックの原因である米国債の格下げ理由になるということですね。
なお債務上限引上げ法案の問題は2019年現在も解決していません。
それでもS&P以外の格付け会社(ムーディーズ・フィッチ)は2019年現在、米国債の格付けをAAAと格付けしています。
しかし米国債を取り巻く議会の状況が悪化すれば、これらの格付け会社においてもAA+格下げされる可能性は高まるといってもよいでしょう。
そして米国債が格下げとなってしまった場合には、米国債ショック再来ということもありえます。
つまり債務上限引上げ問題に関連する政府閉鎖・政府閉鎖危機は米国債ショック再来の布石となるかもしれません。
米国債ショックの布石を読むには
完全に読み切ることは難しいですが、格付け会社の考えを推測することは可能です。
具体的には格付け会社の声明にアンテナを張って注視することですね。
例えば2019年の政府閉鎖において、格付け会社フィッチが格付けに関する声明を出していました。
その内容は『このままでは米国債のトリプルA格付』を維持できないという内容です。
これ以上政府閉鎖が続くと格下げせざるを得ないという直球すぎる声明ですね。
これらの声明は定期的に発信されており、多くの投資家が参考にしています。
日頃から耳に入れておくことで最悪の自体を避けることができるかもしれませんよ。
終わりに
今回は政府閉鎖による株価とVIXへの影響についてお伝えしました。
政府閉鎖自体は株価の暴落・VIXの暴騰をおこすほどの力はありません。
しかし米国債に絡むと不安の種になりそうなので注意が必要ですね。
もちろん米国債ショックのような事態になる可能性は低いと言えます。
仮に政府閉鎖になったとしても多くの場合で杞憂で終わることでしょう。
ですが頭の片隅に置いておけば、とっさの暴落を回避することができるかもしれません。
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